赤十字標章と不正競争防止法の関連について(経済産業省)

NHK党浜田聡事務所が運営する「諸派党構想・政治版」を利用し、経済産業省に質問を行いました。制度を設置された浜田聡参議院議員、ご対応いただいた末永議員秘書にはこの場を借りて御礼を申し上げます。

質問

赤十字使用法第1条、および「赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律施行上留意事項の件」の規定により、赤十字標章とそれに類似した標章をみだりに用いることは禁止されています。

これに関連して、赤十字標章と経済産業政策の関係についてお尋ねします。

まず、商標法第4条第1項第4号の規定により、赤十字標章やそれに類似する標章は、商標登録を受けることができないとされています。
また、不正競争防止法(以下、「法」)第17条は国際機関の標章の使用を規制する条項ですが、「不正競争防止法第16条第1項及び第3項並びに第17条に規定する外国の国旗又は国の紋章その他の記章及び外国の政府若しくは地方公共団体の監督用若しくは証明用の印章又は記号並びに国際機関及び国際機関を表示する標章を定める省令」(以下、省令)には赤十字国際委員会の標章は含まれていないため、法17条は赤十字、赤新月の使用を規制している条項ではないとみられます。
省令に赤十字や赤新月が含まれていない理由としては、省令において指定することができるのは基本的に形状のみであって、あらゆる色彩との組み合わせが規制の対象となるために、省令に赤色と十字・新月の組み合わせを追加することはできず、また単に十字や新月を追加した場合、赤十字使用法で規制していない黒十字などまで規制の対象となってしまうためであると思料します。

以上を踏まえ、
・不正競争防止法の立法趣旨として、赤十字標章も保護の対象となるか。
・赤十字標章は、法第2条第1項第1号に定める「他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているもの」にあたるか。

よろしくお願いいたします。

経済産業省からの回答

不正競争防止法では、事業者間の公正な競争を確保するため、不正競争の1つとして、法第2条第1項第1号に基づき、他人の商品・営業の表示(商品等表示)として需要者の間に広く認識されているものと同一又は類似の表示を使用し、その他人の商品・営業と混同を生じさせる行為等を禁止しております。
ここで、「需要者」は商品等の取引の相手方を指し、最終需要者に至るまでの各段階の取引業者も含まれます。
また「広く認識されている」については、全国的に知られている必要はなく、一地方であっても足りると解されています。

他方で、取引者間において一般に慣習上自由に使用されている表示一般(慣用表示)は、特定人の独占に適さないことから、慣用表示を特に技巧を施すことなく普通に使用する行為等においては、慣用表示は「商品等表示」として認められないと考えられており、不正競争防止法上の保護を受けられないものから適用除外とされています。
慣用表示の例としては、「幕の内」という言葉や、床屋の渦巻看板等がございます。

具体的な事案に関する最終的な判断は司法によることとなるため、確定的な回答を申し上げることができませんが、赤十字標章が不正競争防止法第2条第1項第1号による保護の対象となるかについては、商品等表示として需要者の間に広く認識されていると認められ、保護の対象となる可能性がある一方で、慣用表示に当たるとされ、保護の対象とならないる可能性もあると考えられます。
慣用表示には当たらないと言える場合には、不正競争防止法第2条第1項第1号による保護の対象となり得ると考えられます。

(2023年3月13日)
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